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「上申書」という相続登記添付書類について

相続登記には、「上申書」という書類が必要となる場合があります。


住民票や戸籍などの保存期間が経過して取れない場合に、それを補う趣旨の添付書類です。


このページでは、どのような場合に上申書が必要となるのか、その記載内容はどのようなものであるかについて、司法書士が解説しています。

どのような場合に上申書が必要となるのか

上申書は、すべての相続登記において必要となる書類ではありません。
むしろ、通常は必要ではないのですが、例外的な場合においてのみ添付する書類です。

主にふたつのケースで上申書を添付することとなります。
ひとつは「不動産登記名義人と被相続人の同一性を証明できない場合の上申書」、もうひとつは「他に相続人がいないことの証明ができない場合の上申書(廃止)」です。

1.不動産登記名義人と被相続人の同一性を証明できない場合の上申書

相続登記の申請書には通常、被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)を添付します。
添付する趣旨は、被相続人と不動産の登記名義人(所有者)が同一人物であることを証明するためです。
被相続人の住民票の除票に記載されている住所が、登記簿に記載されている住所と一致することで、不動産の登記名義人と被相続人が同一人物であるということが証明できるというわけです。

しかし、住民票や戸籍の附票には保存期間が定められており、通常は「転出等により除票となってから5年」で廃棄されますので、5年以上前に亡くなった方の相続登記の場合などには、保存期間切れで発行してもらえない場合があります。

また、登記簿に記載されている住所(=所有権を取得したときの住所)が、亡くなったときの住所と異なっているときには、その従前の住所を、住民票や戸籍の附票で証明する必要がありますが、この従前の住所を証明する住民票や戸籍の附票についても、保存期間を経過して発行ができない場合があります。

このような場合(被相続人と登記名義人の住所の同一性を証明する住民票や戸籍の附票が提出できない場合)に、相続人全員から「不動産の登記名義人は被相続人と同一人物で間違いありません」という内容の「上申書」を提出することで同一性を証明して、相続登記を進めてもらうことができます。

登記名義人と被相続人の同一性を証明できない場合の上申書の記載例

上申書

○○法務局御中

今般、被相続人である 亡○○所有名義の後記物件について、相続を原因とする所有権移転登記の申請をいたしますが、物件登記簿上の住所から 亡○○死亡時に至る住所の変遷を証明できる資料が存在しないため、物件登記簿上の所有権登記名義人 ○○ と 亡○○ との同一性を証明することができません。

しかしながら、物件登記簿上の所有権登記名義人 ○○ は、被相続人 亡○○ 本人に間違いありません。

また、本登記が受理されることにより、その権利関係に関して今後いかなる紛争も生じないことを確約し、決して御庁にはご迷惑をおかけいたしません。つきましては、本登記申請を受理していただきたく、ここに上申いたします。

所在 川西市栄根二丁目
地番 ○番○
地目 宅地
地積 200㎡

所在 川西市栄根二丁目○番地○
家屋番号 ○番○
種類 居宅
構造 木造瓦葺平家建
床面積 200㎡


(日付・署名欄省略)

※相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付する必要があります。


上申書が必要とならないケース

このように、被相続人と登記名義人の同一性を証明する住民票や戸籍の附票が提出できない場合に上申書の提出が必要となることがありますが、以下の資料のいずれかが提出できるなら、上申書は不要です。

・所有権に関する被相続人名義の登記済証
・登記簿上の住所が本籍として記載された戸籍謄本

以前は、登記済証(いわゆる権利証)と上申書両方の提出が必要とされることもありましたが、平成29年3月23日法務省民二第174号法務省民事局長通達により、被相続人と登記名義人の住所の同一性を証明するための書類としては、登記済証を提出すればその他の書類は不要となりました。

こちらの法務省の「未来につなぐ相続登記」のページでも説明されていますが、少しずつ相続登記の手続きがシンプルに、簡素化されてきています。

2.他に相続人がいないことの証明ができない場合の上申書

もうひとつのケースとして、相続関係を証明する除籍等が保存期間を経過して発行できない場合という場合にも上申書を提出していましたが、こちらの取り扱いは廃止されました(平成28年3月11日法務省民二第219号法務省民事局長通達)。
今後は上申書の提出は必要なく、「除籍等の謄本を交付することができない」旨の市町村長の証明書を提供すればよいということになりました。

除籍等が発行できない場合に上申書の提出が求められていたのは、除籍等が発行されないことにより、法定相続人が特定できず、他に相続人がいる可能性が排除できないため、相続人全員から「他には相続人はいません」という上申をする、という趣旨でした。

この取り扱いが変更されたのは、「戸籍が廃棄されているが相続人全員から上申書をもらいにくいために相続登記ができない」ということがないように、スムーズに相続登記ができるようにという趣旨、つまり相続登記を促進する趣旨で取り扱いが緩和されたものと思われます。

他に相続人がいないことの証明ができない場合の上申書の記載例

平成28年3月11日付 法務省民二第219号法務省民事局長通達により添付不要となりました。

上申書

○○法務局御中

今般、後記記載物件につき相続による所有権移転登記を申請するにあたり、被相続人の相続を証する書面は一部添付不能のため、本書をもって被相続人の相続人は本件申述者のみであり、他に法定相続人のないことを上申いたします。

また、本登記が受理されることにより、その権利関係に関して今後いかなる紛争も生じないことを確約し、決して御庁にはご迷惑をおかけいたしません。つきましては、本登記申請を受理していただきたく、ここに上申いたします。

所在 川西市栄根二丁目
地番 ○番○
地目 宅地
地積 200㎡

所在 川西市栄根二丁目○番地○
家屋番号 ○番○
種類 居宅
構造 木造瓦葺平家建
床面積 200㎡


(日付・署名欄省略)

※相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付する必要がありました。

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