相続放棄

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兄弟姉妹の相続放棄を詳しくご説明

被相続人の兄弟姉妹の相続放棄は、被相続人の子供や父母が放棄する場合とは異なる点がいくつかあります。
このページでは、被相続人が兄弟姉妹である場合の相続放棄の手続きについて、必要書類やご注意点などについてご説明してまいります。

兄弟姉妹が相続人となるのはどんなケース?

兄弟姉妹の相続放棄手続きのご説明の前に、まず、兄弟姉妹が相続人になるのはどのようなケースなのか、ご説明いたします。

民法は、こちらの図のとおり、第1順位として「子供や孫等」が、第2順位として「父母や祖父母等」が、第3順位として「兄弟姉妹や甥姪(おい・めい)」が、順に相続人となると定めています。

相続人の範囲図


兄弟姉妹は、「第3順位の相続人」です。

つまり、兄弟姉妹が相続人となるのは、第1順位の相続人である子供や孫等がおらず(元々子供がいない、または全員亡くなった、相続放棄した)、第2順位である父母や祖父母等もいない(全員亡くなった、相続放棄した)場合です。

被相続人に子供、父母等の先順位の相続人がいる場合は、先順位の相続人全員が相続放棄しない限り、被相続人の兄弟姉妹は相続人になりません。

兄弟姉妹の相続放棄の期限

相続放棄の期限は、「被相続人が亡くなってから」3ヶ月以内ではありません。「自己のために相続の開始があったことを知ったときから」3ヶ月以内です(民法921条2項)。これは、兄弟相続が相続放棄する場合も同じです。

したがって、被相続人が亡くなってから何年も経過した後であっても、兄弟姉妹は、被相続人が亡くなったことを知ってから3ヶ月以内であれば、相続放棄ができるということになります。

また、被相続人の兄弟姉妹は、被相続人に子供や父母のような先順位の相続人がいない場合のほか、先順位の相続人がいる場合にも、その全員が相続放棄をすると、相続人となります。

この場合(先順位相続人全員が相続放棄をすることによって兄弟姉妹が相続人となる場合)、兄弟姉妹の相続放棄の期限が進行するのは、「子供や父母等の先順位の相続人全員が相続放棄をしたことを知った日から」ということになります。

具体的には、被相続人の子供から連絡があって、「子供全員が相続放棄しました」と聞いたとき、または、債権者から送られてきた書面に、「先順位者全員が相続放棄をして、あなたが相続人となりました」というようなことが書いてあって、それによって先順位の相続人の相続放棄を知ったらなら、その書面か届いたときから3ヶ月の期限が進行していくことになります。

家庭裁判所に相続放棄の申請をするときには、債権者から届いた書面を添付する必要がありますので、その書面は捨てずに保管しておいてください。また、それがいつ届いたのかも、メモしておいてください。

兄弟姉妹の相続放棄の必要書類

兄弟姉妹の相続放棄には、被相続人の子供が相続放棄をする場合とくらべ、大量の戸籍が必要になります。

これは、第3順位の相続人である兄弟が相続人となるためには、第1順位や第2順位の相続人が存在しないということを戸籍で証明する必要が出てくるためです。具体的には、下記のような書類が必要となります。

被相続人に関する戸籍

被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本
 被相続人に子や孫等があるかどうかを確認するため

子・孫等の戸籍

死亡している子・孫等の出生から死亡までの全ての戸籍謄本
 死亡している子・孫等に、さらに子・孫等があるかどうかを確認するため

相続放棄している子・孫等の現在の戸籍謄本
 相続放棄している子・孫等の生存の証明のため

父母・祖父母等の戸籍

父母・祖父母等の死亡の記載のある戸籍謄本
 父母・祖父母等の死亡の証明のため

相続放棄している父母・祖父母等の現在の戸籍謄本
 相続放棄している父母・祖父母等の生存の証明のため

相続放棄申請人である兄弟姉妹の戸籍

相続放棄申請人である兄弟姉妹本人の戸籍謄本
 相続放棄を申請する兄弟姉妹の生存の証明のため

その他

被相続人の住民票の除票(又は戸籍附票)
 管轄裁判所(被相続人の最後の住所地の家庭裁判所)を証明するため

上申書
 3ヶ月の期間を超えて相続放棄の申請をする場合などに、事情の説明のため


※親権者や成年後見人が、未成年者や成年被後見人の法定代理人として相続放棄の申立人になる場合、親権者や成年後見人であることの証明として、親権者の戸籍謄本、後見人の登記事項証明書(又は選任審判書謄本)が上記とは別に必要となります。

※先順位の相続人(子供や親など)が先に相続放棄をしている場合には、その先順位の相続人が裁判所に提出済みのものは添付不要です。


兄弟姉妹が相続放棄をするとその子供が相続人になる?

被相続人が借金を残して死亡し、兄弟姉妹が相続放棄をした場合、その借金は誰に引き継がれるのでしょうか。

相続放棄をした相続人に子供がいれば「子供が代襲相続するのでは?」と思われるかもしれませんが、子供は代襲相続人とはならず、借金を引き継ぎません。相続放棄は、代襲相続の原因とはならないためです。

代襲相続については、民法887条2項に規定されています。

民法887条2項
被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当(=相続欠格事由に該当)し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。

こちらの条文に規定されているとおり、代襲相続は、子が「死亡したとき」または「相続欠格事由に該当したとき」に、その子がこれを代襲して相続人となるという制度です。この規定が、兄弟姉妹についても準用されています(民法889条第2項)。

したがって、兄弟姉妹が亡くなったときにはその子がこれを代襲して相続人となりますが、兄弟姉妹が相続放棄をした場合には、その子はこれを代襲して相続人となることはありません。 そして、兄弟姉妹全員が相続放棄をすると、もう次の順位の相続人は存在しませんので、相続人は不存在ということになります。

兄弟の相続放棄は、全員まとめてした方がいい?

借金がある場合、兄弟の一人が相続放棄をすると、他の兄弟の相続する借金が増えることになりますから、自分だけ相続放棄をして責任を免れたと言われないためには、できれば相続放棄をすることを他の相続人に伝えてあげるほうが親切だと思います。

そして、複数の兄弟姉妹が相続放棄をするのであれば、各自バラバラにすすめていくのではなく、全員まとめて1ヶ所の事務所に依頼して進めた方が、手続きはスムーズに進みます。

また、兄弟だけではなく、先順位の相続人、たとえば被相続人の子供についても、まとめて手続きできるなら、まとめて手続きするのがおすすめです。複数の相続人様の相続放棄をまとめてご依頼いただくことで、少し司法書士費用がお安くなることもありますので、ぜひご検討ください。

まとめ

兄弟姉妹の相続放棄は、被相続人の子供が相続放棄をする場合にくらべ、手続きが少し複雑です。また、子供が親の相続放棄をする場合とくらべると、被相続人の近況がよくわからないために、相続放棄をすべきかどうかについても、悩むことが多いでしょう。

兄弟姉妹の相続放棄についてなにか不安な点がありましたら、司法書士にお気軽にご相談下さい。

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