遺産分割協議

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相続人の中に行方不明者がいる場合の遺産分割協議の方法は?

遺産分割協議は、相続人全員で行わなければならず、一部相続人のみでなされた遺産分割協議は、無効です。
したがって、相続人の中に行方不明者がいる場合であっても、その相続人を除外して他の相続人のみで遺産分割協議をすることはできません。このページでは、相続人の中に行方不明者がいる場合の遺産分割協議の方法について説明しています。

行方不明になってから7年経過しているか

相続人の中に行方不明者が居る場合、その相続人が行方不明となってから7年以上(戦争や遭難などの危難により生死不明である場合は1年以上)が経過しているかどうかで、手続きが変わってきます。

失踪宣告の申立

行方不明者が従来の住所を去ってから7年以上が経過している場合、家庭裁判所に失踪宣告の申し立てをして認められれば、行方不明者は、行方不明となってから7年が経過した日をもって亡くなったものとみなしてもらうことができます。そうすると、遺産分割協議は、行方不明者以外の相続人と、行方不明者の相続人全員で行えばよいということになります。

ただし、行方不明となってから7年が経過している場合に必ず失踪宣告の申立をしなければいけないというわけではありませんので、この場合にも下記の不在者の財産管理人を選任する方法によることもできます。

不在者の財産管理人の選任

行方不明者が行方不明となってから7年以上が経過していない場合には、失踪宣告の申し立てはできませんが、不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申立てて選任されて不在者の財産管理人に遺産分割協議に参加してもらうことができます。

不在者財産管理人選任の申立

民法25条1項は、従来の住所又は居所を去った者で、容易に戻る見込みのない者を「不在者」と定め、不在者については、利害関係人の請求により、財産管理人の選任などの必要な処置をとることができると定めています。

そこで、行方不明である相続人がいる場合には、他の相続人は、利害関係人として、不在者の財産管理人の選任の申立をすることができます。申立をする裁判所は、不在者の従来の住所地を管轄する家庭裁判所です。

申立てにあたっては、不在者財産管理人選任にかかる管理費用を、家庭裁判所に予納する必要があります。弁護士さんが管理人となる場合には、事案によっても異なりますが、予納金は大体30万円~50万円程度となるようです。

不在者財産管理人を交えての遺産分割協議

不在者財産の管理人は、不在者の財産に関する保存行為、目的の物や権利の性質を変えない範囲における利用や改良行為(民法103条)を行うことができますが、これらを超える行為には家庭裁判所で、権限外行為の許可を得ることが必要とされています(民法28条)。そして、遺産分割協議を行う場合には、この権限外行為の許可が必要となります。

裁判所は、不在者が不当な不利益を受けないように配慮するため、不在者の法定相続分を下回るような財産しか取得しないような内容の遺産分割協議案に対しては、原則として許可をしてもらえません。

したがって、不在者が法定相続分以上の相続分を取得する形で、遺産分割協議がまとまることとなり、不在者財産管理人は、行方不明者が現れるまで、取得した遺産を預ることになります。

帰来時弁済(きらいじべんさい)型の遺産分割

上記のように、不在者が法定相続分以上の相続分を取得するような形で遺産分割協議を成立させると、不在者財産管理人は、不在者が現れるまでずっと、取得した財産を預ることになります。そうすると、不在者がなかなか戻らなければ、いつまで経っても財産の管理をし続けないといけないこととなり、不在者財産管理人はとても大変です。

このような事態を避けるために、「帰来時弁済(きらいじべんさい)型の遺産分割」という方法がよく利用されています。

帰来時弁済型の遺産分割というのは、不在者には法定相続分を下回る相続分しか相続させず、他の相続人が不在者のために法定相続分以上のお金を預かり、不在者が戻ってきた場合には、不在者に対して、預っておいたお金を支払うというような内容になります。

ただし、行方不明者が戻ってきたときに、預っていたお金を使ってしまっていたなどということのないように、お金を預かる相続人は、家庭裁判所に対して資力が十分あるということを証明する必要があります。

帰来時弁済型の遺産分割は、相続財産が多額である場合には、認められる可能性が低くなります。

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